ぬか漬けとはなんでしょうか?

発酵食品が話題の今、免疫力を高める乳酸菌をたっぷり含んだ「ぬか漬け」が注目されています。

一般的にぬか漬けは「植物性乳酸菌による発酵食品」と言われていますが、実はそれだけではありません。

乳酸菌以外にも酵母菌や酪酸菌、また各種細菌類などの様々な微生物が混じり合い、発酵された味によってできています。

そもそも乳酸菌は米ぬかには存在せず、野菜の切れ端などに存在する乳酸菌をぬかをベッドの役目として乳酸菌を育てるのがぬか床の目的です。

そのため、"捨て漬け"という作業を繰り返して乳酸菌を増やし、水分・塩を足してメンテナンスをしながらようやくぬか床が出来上ります。

ぬか漬けは非常に奥深い発酵食品です。そのため、ハードルが高く敬遠しがちな方もいらっしゃるかと思います。

それでも昔から日本の伝統食として伝わってきたのには美味しいだけではなく、栄養面でも優れているすばらしい食品として見直されているからではないでしょうか。

手作りのぬか漬けは「美味しい」「体に優しい」「楽しく作れる」生活を豊かにしてくれる優れた食品なのです。

ぬか漬けは体にイイコトがいっぱい!

ぬか床の原料になっているのが、米ぬかです。玄米の表面をけずって精米するとできるのが米ぬかです。

この中には白米を覆っている胚芽とぬか層が含まれています。

米ぬかには米の96%程度にあたる栄養分がそのまま入っているので栄養価の高い食品と言えます。

米ぬかに含まれている栄養素

タンパク質
脂質
炭水化物
ビタミンB群
ビタミンE
ミネラル
食物繊維

その他にも動脈硬化を予防するイノシトールや、細胞の酸化を防ぐフェルラ酸、血圧を安定させるギャバなど体に良い成分が多く含まれています。

ぬか床とは、栄養たっぷりの米ぬかに塩と水、野菜くずなどを加え、発酵させたものです。

発酵がはじまるとぬか床の中に乳酸菌が繁殖して、野菜のタンパク質をアミノ酸へと変化させ、炭水化物を糖質に分解して、ぬか漬けの旨味、風味、酸味が出来上がります。

野菜をぬか床に入れると、発酵の過程で合成したビタミンなども吸収され、生野菜のときより栄養価が大幅にアップします。

ぬか漬けは腸内環境を整える自然のサプリメント

腸内には、100兆から1000兆個にも及ぶ腸内細菌が住み着いています。その中でも大きく3つに分かれるのが

善玉菌  乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌など
悪玉菌  ウェルシュ菌・ディフィシル菌・ブドウ球菌など
日和見菌  善玉菌でも悪玉菌でもない未知の腸内細菌

です。健康な腸内では、これらの腸内細菌のバランスが保たれていますが、ストレスや食事を取らない不摂生な生活、運動不足などから悪玉菌の割合が増えて腸内環境はどんどん悪くなってしまいます。

すると、便秘、下痢などの症状や、血糖値の上昇、花粉症などのアレルギーを発症するだけではなく、免疫力が低下して風邪やインフルエンザなどのウィルスに感染しやすくなります。

腸内環境は体と心に大きな影響を及ぼすため、健康を回復するうえで善玉菌と悪玉菌のバランスを保つことが重要なポイントになります。

ぬか漬けにはたっぷりの植物性乳酸菌が含まれていて、腸内に届くと乳酸菌が善玉菌として活動します。

さらに乳酸を発生させて悪玉菌の繁殖を抑えたり、腸内に住み着いている善玉菌のエサになって善玉菌の菌数が増加していきます

こう聞くといい事ずくめのぬか漬けですが、乳酸菌は腸内に定着しにくい性質を持っています。

毎日ぬか漬けを食べることで、常に乳酸菌が腸内環境を改善してくれる働いてくれますのでぬか漬けは腸内環境を整える自然のサプリメントと言えるでしょう。

日本の誇るスローフード【ぬか漬け】

「スローフード」とは、「ファストフード」の反義語として、1986年に北イタリアにあるブラという小さな村で生まれた言葉だそうです。

そもそもファストフードとは「手早く調理され、注文してすぐに提供される食事」を意味します。

手軽に安価で食べられ、味もそれなりに美味しいとあり、このようなファストフードは世界的に広がりを見せていますが、食材の生産者や調理者の顔が見えることなく、どこで生産されたどのような食材や添加物が使用されているのかはっきりとは分からない、という問題点があります。

このようなファストフードの広がりに不安を感じたのが、北イタリア・ブラに住む食文化雑誌の編集者のカルロ・ペトリーニ氏とその友人たちでした。

彼らは「地域に根ざした食材を使用した、丁寧に作られた食事」を大切にしてもらいたいという思いから、ファストフードではなく食材を含め、ゆっくりじっくりと作られた「スローフード」という言葉を作り、現スローフード協会の前身である「アルチ・ゴーラ」という会を発足しました。

つまりスローフードの「スロー」とは、「ゆっくりと食事する」という意味ではなく、「土地土地にあった生産方法で丁寧に生産された食材を食べることで、食生活とその土地の魅力や文化を見直しましょう」ということです。

ぬか漬けはまさしく日本が誇る「スローフード」。

ビタミンB1が豊富なうえ、乳酸菌の整腸作用も抜群です。ぬか漬けに欠かせない「ぬか床」は、米ぬかと塩、水分を混ぜて乳酸発酵させたもので、昔の家庭には必ずあった日本の伝統食です。

この機会に是非、日本が誇る「スローフード」を楽しんでみませんか?

ぬか床に含まれる主な微生物

ぬか床は生きています。ぬか床にはぬか漬けを美味しくしてくれる乳酸菌や健康を守ってくれるたくさんの微生物が共存しています。

代表的な菌として、乳酸菌・酪酸菌・酵母菌がぬか漬けの美味しさを守ってくれています。


乳酸菌(にゅうさんきん)

乳酸菌とは、糠の糖質を消費して乳酸をつくる細菌の総称です。

腸内にすむ細菌のバランスを整えることにより、健康に役立っています。乳酸菌の種類は多種多様で200種類以上の乳酸菌が見つかっています。

ぬか漬けに必要な酸味・旨味・風味を引き出すだけではなく、腸内を酸性側に傾け腸内の腐敗を抑えたり、腸のぜん動運動を助けて便秘を改善する効果があります。

さらに最近の研究によって、免疫機能の向上や、中性脂肪・血中コレステロール値の低下といったはたらきも知られてきました。

そうしたことから、近年、乳酸菌はプロバイオティクス(腸内細菌のバランスを改善することによって健康によい影響を与える微生物)として注目されています。


酪酸菌(らくさんきん)

乳酸菌が作った乳酸を食べて、酪酸を作り出す細菌の総称です。

人間の腸内に住み着く善玉菌で、乳酸菌の成長を助けてくれます。

嫌気性の菌なのでぬか床をかき混ぜないでいるとぬか床の内部で菌が繁殖し、嫌な匂いを放ちます。

エネルギー源となって大腸の正常なはたらきをサポートする酪酸は腸内フローラを健康な状態にキープするのにも役立っていることがわかってきています。


酵母菌(こうぼきん)

等やビタミンB群を食べてアルコールや有機酸を生成する細菌の総称です。

発酵するとぬか漬けの甘みや香りを引き出すだけではなく、雑菌の繁殖も抑えてくれます。

酪酸菌とは違い、好気性でぬか床をかき混ぜないでいるとぬか床の表面で菌が繁殖し、増えすぎるとシンナー臭を放ちます。

植物性乳酸菌の効果

乳酸菌は大きく2つに別れます。一つは「動物性乳酸菌」、もう一つが「植物性乳酸菌」です。

動物性はヨーグルトやチーズ、そして植物性は漬物や味噌などに含まれる乳酸菌です。

動物性乳酸菌はほとんどが胃酸に中和され、腸まで届かずに死んでしまいますが、植物性乳酸菌は生きたまま腸まで届きます。

では、どうして植物性は腸まで届くのでしょうか?

植物性乳酸菌はとても強くできています。胃酸にも強く、また植物性乳酸菌は漬物塩分も含んでいますので、酸だけでなく濃い塩水塩の中でも生きていられるそうです。

漬物の中にある乳酸菌ですが、なんと30種類のさまざまな乳酸菌が含まれています。その中でも体に良い主な乳酸菌を紹介します。

ラクトバチルス・プランタラム菌大腸菌  O157を抑制する
エンテロコッカス・フェカリス菌  免疫力を高める
リューコノストック・メセンテロイデス菌  整腸作用を強める
ラクトバチルス・ブレビス菌  免疫力と整腸作用を高める
ペディオコッカス・ペントサセウス菌  メタボ予防効果

このほかにもたくさんの腸内環境を整える乳酸菌がたくさん存在します。